企業型確定拠出年金(企業型DC)とは

確定拠出年金の制度

確定拠出年金制度とは、2001年10月に施行された確定拠出年金法により導入された、公的年金に上乗せされる新たな選択肢としての私的年金制度です。 拠出された掛金が個人ごとに明確に区分され、掛金とその運用収益の合計額を基に年金給付額が決定されます。 年金資産の運用は、運用商品(元本確保型商品(定期預金など)や元本変動型商品(投資信託))を加入者自身が選択・売買(配分変更・スイッチング)することにより行います。

企業型確定拠出年金(企業型DC)とは

企業型確定拠出年金とは企業年金の一種で、確定拠出年金法を根拠とする制度です。「企業型DC」や「日本版401k」とも呼ばれます。企業が掛金を積み立て、従業員が資産を運用する年金制度です。加入することで、積み立ての複利効果や税制優遇措置などのメリットが得られます。個人で加入する個人型(iDeCo)と区別され、企業側が設立・運営をします。

対象者

原則70歳未満の厚生年金被保険者が対象です。企業型年金規約で一定の年齢(60歳~70歳)を資格喪失年齢と定めることでその年齢に達するまで積み立てることができます。

掛金限度額

企業型DCのみ加入の場合
月額55,000円が上限。
他の企業年金に加入している場合
月額27,500円が上限
※他の企業年金とは確定給付企業年金や厚生年金基金に当たります。中小企業退職金共済については掛金限度額に影響はありません。

加入から受け取りまでの流れ

①会社が掛金を毎月、加入者の確定拠出年金口座に拠出します。
②加入者は、運用商品を自ら選択し毎月積み立てます。
③年金資産は、加入者自身で運用します。運用商品の変更やその配分割合の変更も自由にできます。
④離転職時も課税されることなく持ち運び可能です(ポータビリティ)。
⑤原則60歳*到達時に受給権を取得します。企業型DCの場合、積立期間を最長70歳までで定めることができます。ただし、会社の就業規則等によって規定できない場合がありますので事前にご相談ください。
⑥受取方法は「一時金受取」または「年金受取」から選択できます。 一時金受取の場合は退職所得として退職所得控除、年金受取の場合は雑所得として公的年金等控除の対象となります。
*確定拠出年金の加入者または運用指図者の通算期間が10年以上の場合。

制度について

企業型DCは大きく分けて4つのタイプで設計できます。
①給与に上乗せして支給
現行の給与体系を変更せず、対象者全員の給与に上乗せして支給します。 上乗せ分を確定拠出年金の掛金として拠出する場合、その掛金は福利厚生費(損金)となります(掛金を前払で現金支給すると給与とみなされます)。 そのため、昇給などによる給与増額とは異なり、社会保険の負担が発生しないため、総額人件費を抑えることができます。 また、会社が掛金を退職金として拠出する場合、拠出した掛金は退職給付債務の計上が不要になります。


②選択制
現行給与の一部を原資として、従業員の給与の一部から積み立てをします。拠出をしないでそのまま給与として受け取ることも可能です。掛金にした分は給与にカウントされないため、給与額から算出される社会保険料が下がるというメリットがあります。また、企業型DCは非課税で運用でき、運用した分を60歳以降に受け取る際に退職所得控除や公的年金等控除が適用されるため、節税につながります。


③給与上乗せ支給+選択制
①と②の併用です。選択制による掛金に、会社から支給される掛金を上乗せすることで、より多くの資産形成を目指せます。 ①同様、加入者が選択する掛金は給与と見なされませんので、非課税および社会保険料の対象外となります。 全体で月額最大55,000円まで積み立て可能な設計にできます。


④マッチング拠出
会社から支給される掛金の額を上限として、従業員自身の所得から上乗せ拠出ができます。 これを「マッチング拠出」と言います。マッチング拠出による掛金は、選択制と異なり社会保険料算定の対象とはなりますが、全額所得控除されるため、税金はかかりません。

企業型確定拠出年金(企業型DC)メリットと注意点

メリット
企業型DCの最大のメリットは「積立」「運用」「受取」と期間を通じて税制上大きな優遇を受けられることです。
さらに選択制の制度設計の場合、社会保険料の算定からも外れます。
・「事業主掛金(会社のお金)」として拠出された掛金は、個人の所得とみなされません(選択制の場合も同様です。 また、マッチング拠出は「加入者掛金(個人のお金)」として給与(所得)から拠出しますが、課税の際に全額所得控除の対象となります)。 通常可処分所得(いわゆる「手取り」)から積み立てた場合は、課税後の所得から積み立てるため、税優遇のある確定拠出年金での積み立ては、より効率よく老後資金を準備できることになります。
・運用益が出た場合、大きな複利効果を期待できます。通常、運用の結果得た利益には20%(所得税15%、住民税5%)課税されます。 しかし、確定拠出年金では、この運用益に課税がされません。 つまり、一般の投資であれば税金として負担すべき金額をそのまま次の運用に活かせることになり、効率的な運用を実現できます。
年金資産には、特別法人税がかかりますが、2023年3月末まで凍結が決定されています。受取方法は「一時金」と「年金」から選択できます。受取方法に応じて異なる税控除があるため、加入者ごとのライフプランに応じて選択できます。

注意点
・資産運用のリスクを負う
確定拠出年金では、掛金の拠出額は確定していますが、将来の給付額については運用結果に左右されるため確定していません。 そのため運用がうまくいかなかった場合、資産が減ってしまうというリスクがあります。 しかし、これは逆に言えば運用がうまくいった場合は、資産が増えることを意味します。 将来に備えるための資金運用としては、非課税で積み立てながら(選択制の場合は社会保険の負担も軽減しながら)運用のできる確定拠出年金は、 通常の資産運用に比べると元本や運用益に税金が掛からない分、運用上の余裕が大きいものと言えます。

・60歳まで引き出すことができない
確定拠出年金は、一定の要件を満たさない限り脱退や、途中で資産を取り崩すことはできません。 引き出しができるのは60歳以降なので、ご自身で掛金積立か、現金受取かの金額を選択できる企業型DCへ加入している方は、 短期的に必要な資金は取っておき、無理のない範囲で積み立てていく必要があります。

従業員への投資教育が必要
企業型DCでは、会社が投資に関する基礎的な教育を継続的に実施することが努力義務とされています。 そのため投資教育を実施するための仕組み作りが必要となります。